面接@音楽療法 vol.2

 

小沼愛子

 

皆さまこんにちは。前回の「ブログその58:面接@音楽療法 vol.1からの続きです。

 

前号では「学生」という立場で音楽療法関連の面接を受ける時の話を中心書きましたが、今回は私が最近実際に受けた仕事の面接の話を書いてみたいと思います。

  

今回私が受けた面接は、ごく小さな仕事の為のものでした。 

まずは、脳に後天的障害を持った中高生のグループ音楽療法を週に1〜2つ受け持つ、というものです。ただし、この会社は現在音楽療法のプログラムを拡張しているため、数ヶ月後には高齢者施設、その後は特別支援学級、音楽学校での臨床や教育などの仕事も加わってくる、という設定でした。

 

面接官は、この地域の音楽療法士なら皆名前を知っているようなベテラン音楽療法士で、大きな団体のまとめ役や複数の音楽療法プログラムの責任者として、地域ベースでの音楽療法発展に長年貢献してきた方です。その人の面接での質問はなかなか難しいものが多いよ、と音楽療法仲間から聞いていたせいもあって、かなり緊張して臨んだ面接でした。

 

音楽療法だけではなくて、どのような仕事でも「面接の定石」というものがあると思います。結果から言うと、今回私が受けた面接は、ほぼ「定石通り」なものでした。要するに、よくある音楽療法の面接パターン、だったわけです。

 

しかし、自分の知る限りでは、定石からはほど遠いような面接を受けた音楽療法士もいて、同じような仕事の為の面接なのに、こんなに違いがあるなんて面白い、と思ったことが何度もあるのも事実です。これは場所が日本でもアメリカでも関係ない現象のようですが、アメリカでは比較的、「お決まりの質問」をされることが多い傾向があるように、今まで見聞きしたものを総合すると感じます。

 

お決まりの質問については前号で述べた事柄が挙げられますが、仕事の面接となれば、それ以外の事も質問されてしかるべし、ではないでしょうか。インターンや学校内での面接とは違い、面接官も音楽療法士であるとは限らず、その会社/施設の他業種の人であることも想定できます。

 

会社や施設内ので仕事であれば、「その組織内でどう機能出来るか」ということがインターンの時よりもはるかに重要視される事柄であると思います。また派遣形式であれば、「派遣先でどうその場所の人達とコミュニケーションを取ってスムースに仕事を行えるか」ということも重視されると思います。

 

今回私が受けた面接では、仕事の内容が多岐に渡るせいもあってか、かなり多角的に審査されている感じを受けました。

「この人はどのような経験をしてきて人なのか、物事をどう捉えどう行動するのか」

「どう他人とコミュニケーションを取るのか」

「整理能力、情報管理能力、書類作成能力はどのレベルなのか」

「臨床士・教育者としてどんな知識を持っていて、何が出来る人なのか、即戦力があるのか」

 などを見極めようとしていることが質問の内容から伺えました。

 

前号に挙げたような質問の他には、「問題が発生した時や難しい事に直面した時の対応」に関することを何度か違った形で訊かれました。例えば、

「あなたが過去に新しい音楽療法のプログラムを立ち上げて定着させるまでの過程で、一番難しかったことは何でしたか、そしてそれにどう対応しましたか」という感じです。このような、「問題解決力」についての質問も、音楽療法関連の面接ではごく一般的であると思います。

 

それに加えて、近年強い傾向である、

「テクノロジーをどう臨床に使うか、あなたに使えるテクノロジーは何か」

という質問、また、アメリカでは私は外国人となるため、

「音楽療法士として文化の違いについてどう考えているか・対応するか」

という質問もありました。

 

面接官の質問に答えつつ、音楽療法・教育についての考え方について話し合ううちに、あっという間に一時間が経過していました。その後、演奏と歌の試験があり、お互いのスケジュールの確認、そして職場を一通り案内していただき、すべての過程が終了しました。

 

厳しい、と聞いていた面接は終始和やかな雰囲気で進み、面接官の態度は常に友好的でした。しかし、ムードは柔らかいものの、質問の内容は非常に実務的かつ実践的で鋭い質問が多く、常に話の中心からずれない面接官のプロフェッショナルぶりには、感嘆した、と言っても大げさではないくらいです。

 

その一方、面接の最後の最後、演奏力チェックの際に、「信じられないかもしれないけれど、演奏も歌もほとんで出来ない人がこの仕事の面接を受けにくることがあるんですよ。」と、ため息まじりに本音を漏らされたような瞬間もあり、面接する側の難しさを垣間みた気がしました。

 

仕事力や人柄のみではく、履歴書など紙の上の情報だけでは測ることが出来ない「音楽力」をチェックをすることも、音楽療法の面接では大切な作業だということです。

 

 

次号も、「音楽療法士と面接について」の話題で続けてみたい思いますので、皆様、もう少しお付き合い下さい。

 

 

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