アメリカ音楽療法学会(AMTA)学術大会2011への参加 Vol.2

中井 弥生

 

2011年11月16日から20日にかけてアメリカジョージア州アトランタでアメリカ音楽療 法学会の学術大会が開催されました。通常開会式は木曜日の夜に行われ、そこから本格的に学会がスタートするのですが、水曜日からビジネス関連のミーティン グや有料のトレーニングが行われます。私は水曜日に行われるトレーニングから参加させていただきました。

水 曜に行われたトレーニングの内容は介護者に対するケアーについてであり、介護する側が感じる体力的、経済的、精神的な負担について、そしてそれらを音楽療 法士がどうケアしていけるかについての内容でした。特に長期のケアが必要な患者さんは家族や周りのサポートチームとの連携、チーム全体のケアが大切になっ てくると思います。音楽療法の仕事は直接関わるクライエントに焦点を置きがちですが、クライエントを取り巻く全ての環境をトリートメントする上で考慮する 包括的なアプローチの大切さを再認識しました。

金曜日からは一般演題やシンポジウムが行われ、たくさんの講義に行くことができました。私が感銘を受けたのは、イギリスロンドンのRoyal Hospital for Neuro-disability病院で長らく音楽療法士をされ最近アメリカのテンプル大学で教鞭をとっておられるマギー(Wendy Magee)博士の講義でした。彼女は10年以上前から ”Low awareness state” の患者さんに対する音楽を使ったアセスメントの作成に取り組んでらっしゃいました。私もそのプロジェクトに関する彼女の論文を数年前に読んだ記憶があるの ですが、クリニシャンとしてリサーチャーとして患者さんのために音楽を有効利用させたいという彼女の熱意をその論文から感じたのが強烈に印象として残って いました。

 

そ して、今回の講義で彼女はそのアセスメントの実用化に一歩近づいた報告を行っていました。ご存知の通り、アセスメントには3つのカテゴリーがありその最上 級であるスタンダライズドアセスメントとして承認されるには多数の被験者で信用性と妥当性を証明されなければ行けません。音楽療法のフィールドでは残念な がらまだその段階にいたっているアセスメントは存在していませんが、その一つ下の段階であるフォーマルアセスメントは多数存在しており、作成者の皆様は 日々研究や考察に励んでいらっしゃいます。

 

私 も以前つとめていた職場で学校現場における社会性のアセスメント作成にチームで取り組んでいました。アセスメント作成の仕事は根気、忍耐、創造性、そして 年月のかかる本当に大変なものです。マギー博士が14年行ってきた研究発表を聞き、彼女の熱意、真剣さ、そして実行力に体が震えました。私たちが作成して いるアセスメントはまだ初めてたったの数年です。彼女のアセスメントに比べればまだ赤ん坊のような状態です。彼女の発表を聞いたことでモチベーションを高 めていただき、初心に戻り日々研究を重ねていきたいと思いを再認識いたしました。

 

参考までにマギー博士のアセスメント関連の文献を下記に掲載させていただきます。

 

Magee, W.L. (2007). Music as a diagnostic tool in low awareness states: Considering limbic responses. Brain Injury. 21(6), 593-599.

 

Magee, W.L. (2007). Development of a music therapy assessment tool for patients in low awareness states. NeuroRehabilitation, 22(4), 319-324.