ブログその19: ヴォイス Voices “A World Forum For Music Therapy”

中井 弥生

 

2月もはや月末となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 

今回も世界音楽療法連盟(WFMT) 同様、世界の音楽療法のかけはし的存在となっている”Voices: a World Forum for Music Therapy” をご紹介したいと思います。このフォーラムは世界中の音楽療法士がオンライン上で意見発表や交換を行える無料のコミュニティーとなっています。

 

About」のページによりますと、VoicesはノルウェイにあるBergen大学内の「Grieg Academy Music Therapy Research Center」がアメリカのAntioch大学と世界音楽療法連盟の協力のもと発行しています。無料で提供できるのはスポンサーと無償で編集等の仕事に務めている方達のおかげだそうです。

 

Voicesが目指しているのは以下の2点であり、1)そ れぞれの国や地域の文化が音楽療法に与える影響は大きいという観点から、様々な理論、臨床、を議論できる場を提供すると言う事、2)こういった場を提供す る事で音楽療法をもっと国際的なものにし、東西南北、様々な音楽療法の見解を交流させる事によって音楽療法の発展を促す事と述べています。

 

 

Voicesのウェブサイトには主に5つのセクションがあり、それぞれについて以下のようにまとめてみました。

 

 

1、ジャーナル (Journal)

    オンラインジャーナルは年三回発刊されており、Current Issueで一番新しいもの、Back Issues で過去のジャーナルが見れるようになっています。また、記事を探したい場合はSearch the Journalにいき、著者やキーワード等を入れるとそれに関する過去の記事のリストがでてきます。ジャーナルに記事を提出したい方は Guidelines と Submissionに方法が書かれています。言語は英語になりますが、2カ国語でかける場合は英語と著者の母国語の2言語を両方提出する事もできるそう です。

Voicesの記事にはエッセイ、インタビュー、臨床、リポート、ストーリーなど様々な種類の記事があり、基本的に投稿された全ての記事が編集者などによってレビューされるようです。

 

 

2、隔週コラム (Fortnightly Column)

Voicesで編集を務めてらっしゃる方々が交代で様々なトピックに関してコラムを書いています。”Columnists”に行くと著者別の記事リストが見れます。

編集者の一覧はこちらです


 

3、今月の国

月ごとに選ばれた国での音楽療法に関する記事が特集されています。一番新しい記事は、2011年9月に掲載されてたカリブ海に浮かぶ小さな島国、Antigua and Barbudaでの音楽療法についてでした。世界は広い!日本に関する記事は生野さんがたくさん書かれていますが(日本語でもたくさん書いていらっしゃい ます)2007年度の記事が一番新しいものとなっています。また日本が特集される月が来てほしいですね!

 

 

4、ディスカッション

ディスカッションは掲示板方式になっており、2種類存在します。一つは管理付きの掲示板で、主にVoices に載せられた記事について話し合われます。意見は2人の管理人であるJoke Bradt氏とThomas Wosch氏にメールを送るような形式になっています。もう一つは管理無しの掲示板で基本的に投稿者の自己責任にまかされています。こちらではもう少し音 楽療法全般についての意見交換がされています。

 

 

5、リソース

リンク集やイベント情報が掲載されています。

 

 

以上、Voicesのウェブサイトの様子をお伝えしましたがいかがだったでしょうか?

私は最近すっかりボイスにくるのがご無沙汰になってしまったのですが、数年前、編集者の一人でもあるDrexel 大学のJoke Bradt教授(Drexel大学は音楽療法だけではなく、ダンスムーブメントセラピー、ドラマセラピー、アートセラピーの学部もあり創造芸術療法全般を 学べる大学として知られています。)が2008年に書かれた、”Evidence-Based Practice in Music Therapy: Let’s Continue the Dialogue”(証拠に基づく音楽療法:対話を続けよう)がとても印象に残っています。

 

ご存知の通り、科学的研究でいう「証拠」にも色んなレベルがあり今一番レベルが高い証拠として認識されているのは「meta-analysis of randomized controlled trials」でしょう。

し かし,彼女は果たして同じような階級制度で証拠をみる事が音楽療法の世界でも必要な証拠に基づく臨床と言えるかと疑問を投げかけています。臨床家の意見、 ケーススタディー、質的証拠、ないがしろにされがちな証拠は果たして本当に意味のない事なのか?これらの証拠の質、信頼性をあげる事は不可能なのか?

 

証 拠、証拠と言いながら「証拠」というものが臨床においてどういった意味をなすのか、証拠のどのレベルの話をしているのか、なぜ証拠が必要なのか。そんな事 を深く追求していなかった自分、ただ科学的であれば良いと考えてた自分の頭をがーんと殴られたような衝撃を受けました。まさしく、音楽療法士同士でもっと もっと「音楽療法界に必要な証拠に基づく臨床とは何か」という対話を続けていかなければいけないなと思わせてくれた記事でした。証拠を検証するのには不可 欠な 系統的レビューをたくさん行っているコクランという機関があります(コクラン共同計画についての日本語パンフレットhttp://cochrane.umin.ac.jp/publication/cc_leaflet.htm)。最近音楽療法といくつかのポピュレーションに関するリサーチがいくつかレビューされましたが、彼女はその機関の仕事にも関わっており、リサーチ技法に関する講義やプレゼンテーションもたくさん行っています。

 

 

このように大変共感できる記事に出会う事もあり、 全く違った発想をもっている方々の意見を発見することもあります。「Voices」はその名の通り様々な「声」を届ける場となっていますので、賛否両論、 議論が渦巻くような意見や記事もみられ、あらゆる角度から音楽療法を考える機会を与えてくれます。研究発表だけでなく個人の意見をまとめたような記事も掲 載されているので、信頼性や妥当性については自分自身でじっくり検証してみなければならないものもありますので注意してください。

 

色んな意見を読んでみて、自分の音楽療法の理念について考えたりこれからの音楽療法の方向性などを考えてみるのも勉強になるかもしれませんね。

 

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