アメリカ音楽療法学会2012年次学術大会(AMTA National Conference 2012)       〜参加リポート①〜

 

小沼愛子


 

去る10月11日より10月14日、私とスタッフ井上は、アメリカ音楽療法学会の年次学術大会 (The 2012 Conference of the American Music Therapy Association)に参加してまいりました。目の回るような忙しいスケジュールながら大変楽しく意義のある学会参加となり、あっという間の4日間でした。

 

今回から3回に渡って、この学会とその関連記事をこのブログで紹介させていただきます。


 

今回の開催地は「Pheasant Run Resort」。イリノイ州のセントチャールズ、大都市シカゴから車で西へ1時間ほど行ったところにあるリゾートホテルでした。

昨年まで「AMTA年次大会は11月後半に行われる」というのが通例だったのが、今年は一ヶ月以上早い開催となり、イリノイの厳しい冬の到来前だったのは嬉しいことでした。

 

*開会式の様子
*開会式の様子

 

さて、開会式にて、本大会の参加者は約1600人、とアナウンスがありました。日本の学会の参加人数でいうと、今年9月に宮崎で行われた日本音楽療法学会の学術大会の参加者数はこの3倍以上(とあるニュースで読みました)で、大きく上回っています。意外に思われる方もいらっしゃると思いますが、実際、学会員数もこの比率に近いのが現状です。

 

このAMTAの年次大会、4、5年前には2000人以上の参加があったのを記憶していますが、この数年は参加者が減少してきているように感じます。それとは反比例して学生の参加割合が高くなっているようで、ここは日本の学会と大きく異なる点かもしれません。今回の大会では、プログラムに「学生向け」と明記された発表がいくつかあったのは新しく目についた事柄の一つでした。AMTAの学生会員費と学会への参加費は、プロフェッショナル会員費と参加費と比べてかなり安価です。学生をサポートするという姿勢は素晴らしい一方、プロフェッショナルの参加人数が減ってきている状況は憂慮するべき点かもしれません。

 

毎回、発表演題に「その年の傾向」のようなものがあるのですが、「今年は自閉症関連、ノードフ・ロビンズ関連、そしてテクノロジー関連が多い」という声が参加者達から聞かれました。特にテクノロジー関連では、iPadなど身近にあるテクノロジーを臨床でどう使いこなすかという、実践入門的なものが複数見られ、音楽療法界でこの分野の習得が必須になりつつある象徴のように感じました。

 

*大会プログラム表紙
*大会プログラム表紙

 

この大会のキャッチフレーズは、Changing Winds: Innovation in Music Therapy” で、日本語に訳してみると、「変化の風:音楽療法のイノベーション(革新)」という感じになるでしょうか。

発表の中にも、「イノベーション」という言葉を意識してタイトルに使ったものがいくつか見られましたし、テクノロジー時代到来を印象づける発表が多かった、ということもその一つとして考えられるかもしれません。


 

 

しかし、現在のアメリカ音楽療法界のイノベーション、と言えば、ここ数年議論されているMaster’s Level Entry(音楽療法士になる為に修士号が必須となる)がその最たるものではないでしょうか。実際これに関する演題も複数見られ、私もそのうちの一つに参加してみました。 参加者が自由にこの議題について質問し、それにAMTA役員が答えるという形式のもので、 鋭い質問を投げかける人や冷静に問題点を指摘する人が多く、沢山の音楽療法士達がこの議題について真剣に考えている、ということに安堵し感銘も受けました。

 

その反面、少し深い質問が出ると、AMTA側は「今情報を集めている最中です」という答えに終始する感じで、特に新しい情報を得ることはありませんでした。昨年までは、この議題が急ピッチで採択に向けて進んでいるという印象が強かったのですが、今回の学会では、AMTAとしてはまだまだ明言できない事柄が多い状態であり、あくまで慎重に話を進めているという姿勢を崩さない、という印象を受けました。

 

「イノベーション=革新」と、言葉でいうのは簡単かもしれませんが、やはり業界全体に影響するような重要事項の決定は、慎重に時間をかけて情報収集し、その上で議論と推考を重ねて行われるべきである、というのが、この議論に参加して感じたことです。

 

大きな団体の中で関連する人達が皆足並みを揃えて進むことはほぼ不可能であるとは思いますが、私達一人一人が関心を持って関わっていくことが大切な事だと、何だか初心に帰った気持ちにもなりました。学会に参加した際、音楽療法関連の情報収集だけで終わるのではなく、学会や自分の基本理念などについても考え直すことが出来る機会になるのは大変有り難いことだと感じてもいます。

 

 

今日はこの学会の概要と主題についてを中心に書かせていただきました。

 

次回は、この学会にて「音楽療法かけはしの会」の行った発表などについて紹介させていただく予定です。

 

 

 

 

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コメント: 2
  • #1

    Taneka Bissonette (火曜日, 31 1月 2017 20:34)


    Thanks for sharing your thoughts. I truly appreciate your efforts and I will be waiting for your further post thank you once again.

  • #2

    Darlene Ogilvie (水曜日, 01 2月 2017 10:42)


    I quite like reading an article that can make people think. Also, thanks for allowing me to comment!