「第36回日本高次脳機能障害学会学術総会」に参加して

 

細江弥生

 

 

少し前の話になるのですが、1122から2日まで栃木県宇都宮市で開催された、「日本高次脳機能障害学会学術総会」に参加して参りましたので、どのような学会であるか皆様に少し紹介させていただきます。

 


「高次脳」という言葉は最近良く聞かれる方も多いかもしれませんが、大変広義な意味合いを持つ言葉で、注意障害、記憶障害、失認、失書やソーシャルスキルなど多岐にわたる認知機能に障害が及んだ時に、日本ではこの言葉が使われる事が多いようです。学会に関してはもともと失語症を主に扱っていた学会が元となっているため「旧日本失語症学会」の名前が今も併用されています。

 

この学会は、日本に帰国したら是非参加してみたいと思っていた学会のひとつでしたので、今回参加できてとても光栄でした。また、日本での学会に初めて参加する私は、その雰囲気がどんなものか感じる事も楽しみの一つでした。

 

高次脳という分野が広い為か,言語療法士さんはもちろんの事、作業療法士、臨床心理士、医師、音楽療法士と他業種の方々が多く発表をしている学会であるという印象を受けました。私が現在働く病院からも、まさしくここにあげた全業種総出で参加しました。

 

「一般演題」と言われる臨床家や研究者達が応募して発表するものは、1演題あたり5−7分と発表時間が短く、あまり内容を深く知ることができないのが残念でしたが、演題の種類は、失認、錯誤、リハビリ経過、認知症、失語、画像診断、病型など様々な分野に細かく分かれていました。中には大変専門的なものもあり私の頭では理解不可能と感じる事もあり、この世界の奥の深さを感じました。臨床家である私自身はやはり、経過報告、特に良くなった例などを聞いているのが心地よかったものです(笑)。

 

教育講演や特別講演と呼ばれる1時間以上などの長めの講義ではそれぞれのテーマについて深く学ぶことができ大変勉強になりました。これらの講演は、失文法について、聴理解とそれに伴う脳の活動部位について、また、認知症による妄想について、認知における「気づき」についてなど、専門的かつ哲学的な話があり、日本におけるニューロリハビリテーションの分野の最近の動向なども垣間見ることができ、大変興味深かったです。

 

音楽療法士による発表は3題のみと数少なく、今後もっと音楽療法士がこの学会でも活躍できるような機会が増えるといいと感じました。音楽療法以外の専門分野で現在音楽療法がどのような位置づけであるか、音楽療法士として質を向上していくためにも自分自身が行っていかなければならないことなど、様々な想いが頭をぐるぐる駆け巡る2日間でした。


 

今年は栃木県の宇都宮で開催されたため、名物の美味しい餃子も堪能することができました。美味しいものを囲みながら仕事仲間とこれからのリハビリテーションや研究などについ話し合う。そういった交流も学会参加の醍醐味です。たくさんの刺激を受け、私にとって今年の学びの秋を締めくくる良きイベントとなりました。