今週の英語15 時代と共に変化する英語:「徘徊」という言葉の変化

細江弥生

 

言葉というものは時に人々の考え方が反映されているものです。そしてその考え方が変わるとともに言葉自体も変化していく事があります。

 

特に障がいや病気に関係する言葉は、当事者への配慮や世間の考え方の変化と共に、その数多くが変化してきたと思います。

 

今回は、今現在私が特に気になる言葉についてご紹介します。

認知症の方に多い行動の一つとして「徘徊」という言葉を聞いた事がある方も多いと思います。この言葉は専門書にも使われており、専門家だけでなく一般の人が普通に使ってきた言葉です。しかし、認知症の方が歩く時には、何か「思い」や「目的」「理由」があり、「意味もなく歩き回る行動」を指す、「徘徊」とい言葉は止めようという動きが高まっています。「散歩」「一人歩き」など他の呼び方をする専門家も増えています。

 

英語で「徘徊」は、 wanderingと言います。私が音楽療法を大学で学んだ時も、働いていたときも普通に使われていた言葉です。このwanderingという単語は「とりとめなくさまよい歩く」という意味を含んでいます。

 

私がアメリカで働いていた頃は wanderingという言葉を変えようという社会全体の動きは特に感じませんでした。私が知らないだけかもしれませんが、現在も英語の論文でも教科書でも専門書でも wanderingは主流の言葉なので、知っておく事は必要かもしれません。

 

しかし、もしこの言葉の使い方に疑問を持つ方がいらっしゃったら、是非英語でも別の適切な言葉を広めていただけたらなと思います。

 

何か他の言い方をしている国はいないか調べてみた所、イギリスのAlzheimers society は walking alone(一人歩き、散歩)と言う言葉を併用して使っています

 

同団体のウェブサイトには、

wanderingには意味もなく歩くという言葉の印象が強く、目的を持って歩いている認知症の人達への対処法を考える点で helpless=役に立たない単語だ

と説明しています。

 

そして南アフリカの認知症に関するパンフレットにもこの言葉が併用して使われているのも見かけました。

 

まだまだ英語でも日本語でも浸透していない walking alone という単語ですが、是非  wanderingと共に覚えていただけたらと思います。

 

<発音:クリックすると音声が流れます>

wandering  http://ejje.weblio.jp/content/wandering

walking  http://ejje.weblio.jp/content/walking

alone  http://ejje.weblio.jp/content/alone

 

 

 

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