2016年

8月

02日

No.189 聴くとリラックスできる音楽とは?

小沼愛子

 

気がつけばもう8月、夏真っ盛りです。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 

暑い夏の夜、聴くと涼しくなる音楽でもあると良いのですが、今回はそれと少し似た?「リラックスできる音楽」関連の話です。

 

「音楽療法士です」と人に伝えた時、「癒し系音楽やリラックスする音楽を奏でてくれるの?」などと言われた経験のある方、このブログの読者には多いかもしれません。

 

リラックス効果のある音楽というと、かつて日本でブームになったα波の出る音楽」などを思い出す方もいらっしゃるかもしれません。また、かつて世界的に一躍有名になったモーツァルト効果(Mozart effect) についてご存知の方は多いことでしょう。

 

これらはいずれも、後に異論・反論が数多く出たことでも知られていますが、流行った当時、一般への浸透度は結構高かったように記憶しています。「音楽療法の勉強をしている」と話すと、「音楽療法って知らないけれど、α波の出る音楽の研究をしているの?」と真面目に訊かれたこともありました。。。言葉としては「α波」の方が「音楽療法」よりは確実に知名度が高かったようです。

 

モーツァルト効果やα波の出る音楽については、その名を使った商品=音楽が売れ、商業的に成功した例と言えるかもしれません。体に良い効果があると言われる商品が登場すると試したくなるのが人情ですが、音楽も決して例外ではないというわけです。

 

さて、「リラックス効果のある音楽を教えて欲しい」と言われて困惑した経験のある方もいらっしゃると思います。実際に「この質問をされて答えに困った」という音楽療法士と出会ったこともあり、今回このブログで取り上げています。

 

 

ここでは、「全ての人類の脳をリラックス状態に導く音楽」というのは、2016年現在私の知る限り発見されていない、という事実(仮定)を前提に話を進めたいと思います。

 

先にあげたモーツァルトの音楽やリラクゼーション音楽には、「気持ちが落ち着く」という影響を与えることが期待されていることがあるようですが、決して万能ではなく、「聴いてもイライラするだけ」という反応を示す人がいても驚くことではありません。

 

どんなに素晴らしい音楽でも、聴く人が不快に感じれば脳にポジティブな影響を与えない可能性が高いわけです。

 

2014年に出版された著書「医学的音楽療法 基礎と臨床」の中で、この質問に関連した内容があったので紹介します。多章から成るこの本の著者の多くは日本人の非音楽療法士の先生方ですが、海外からの文献も数個使用しています。縁あって私が翻訳させていただいた第24章「手術、医療処置、検査への音楽療法と音楽ベースの介入」に、今回のブログトピックに関連した事柄が書かれています。この章の著者は音楽療法士のClaire Ghetti博士です。

 

ここで引用されている「高いリラックス効果のある音楽」の定義は以下になります。

 

  1)         1分間におよそ60拍のテンポ

  2)         範囲の定められた強弱の変化

  3)         中程度の音の高さ、中央ドよりも1オクターブ高いド(C5)の周辺

  4)         通常、歌詞や声は含まれない

  5)         長調、おもにダイアトニック

  6)         旋律的形態が上昇または下降する

  7)         シンセサイザーや弦楽器の使用

  8)         比較的単純なリズム構造

 

この引用元は、Tan博士の研究で、3つの研究を通して得た結果だそうです。

 

 

さて、上記の条件に比較的当てはまる曲名などがすぐに思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。

 

日本のテレビ番組で、「サンサーンスの白鳥 がリラクゼーション音楽としてお勧め」と、紹介されているのを観たことがあり、なるほど、確かに上の条件に割と当てはまる曲かも、と思ったことがありました。とはいえ、この曲が全ての人にとって心地良いものとは限りません。

 

結局は「個人による」ということをGhetti博士もしっかりと述べられています。

 

「音楽と人の関係」は千差万別です。同じ音楽を聴いても人によって反応や心理状態の変化は違ってきます。

 

そのことを踏まえた上で、上記のようなリサーチ結果なども参考にし、「癒しの音楽って?」という「よくある質問」にそれなりに答えることのできることは音楽療法士の必須項目かもしれません。

 

また、先月号ニュースレターのコラム「音楽と人間の関係」の中にも書いたことなのですが、「自分と音楽の関係」を改めて客観的に考えてみることも音楽療法士にとって重要だと考えています。

 

例として私個人のことを言えば、音楽の関係は複雑な様相もあり一言で表せるようなものではありません。折に触れて行ってきた「音楽と自分の関係の振り返り」は自分を知る意味だけでなく、実際の臨床への役立ちにも確実に繋がっていると感じます。まだお試しになっていない方には是非お勧めしたい項目です。振り返りの具体的な方法については後にニュースレター内でお伝えする予定です。

 

 

 

 

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