なにをもって音楽というか? その1 ~アメリカンアイドルのオーディション現場から~

小沼愛子

 

今回は、私が長年興味を持ち続けている「何をもって音楽というのか?」という疑問、突き詰めていうと「音楽って何?」という大疑問に繋がる話の導入編です。

 

最近実際に体験した現象から、どこから音楽というのだろう?と疑問に思ったことを書いてみます。

 

ボストンコモンという公園のイベント用ステージ周辺
ボストンコモンという公園のイベント用ステージ周辺

数週間前、個人的な用事でボストンのダウンタウンまで出かけました。街の中心部にある大きな公園を横切って歩いて行くと、多くの若者がいくつも長い列を作っていることに気がつきました。その中にはギターやキーボードを抱えたり、発声練習らしきことをしている人達がいて、「音楽関連のイベント?」と一瞬思ったものの、あまり見たことのない光景と雰囲気を不思議に思いながら歩き続けました。

 

ある瞬間、”American Idol” のロゴがドーンと入った大型バスが目の前に現れ、あ、そういうことか・・・と納得。復活予定の人気TVショー、「アメリカンアイドル」のオーディションだと確信しました。しかし、その時はまたオーディション開始前だったようで、興味深々ながらも用事の時間に遅れないよう足早に歩き去りました。

 

用事を済ませて公園に立ち戻ると、叫ぶような苦しげな声がマイクとアンプを通して拡散されています。

 

そこで私の頭の中で混乱が起こりました。

 

「あれ?・・・

 

これは・・・

 

 もしかして、歌ってる?」

 

判断をしようと聞こえてくる声に集中した時、すれ違った人達が  “Oh no, this is bad. It’s not music…” と話しているのが耳に入ります。やはりオーディションを受けている人の歌だったわけですが、私には一瞬歌と分からないようなものでした。

 

アメリカンアイドルは日本でも放映されたため、この勝ち抜きショーについてご存知の方も多いと思います。アメリカ各地で開催される第一次オーディションは「誰でも参加できる」という売りです。地方オーディションの様子は番組内で一部紹介されるため、実に様々なレベルの人達が応募してくることでもよく知られています。

 

今回、通りすがりの人が「It’s not music」と言い、私自身も一瞬何か分からず混乱しましたが、オーディションを受けているご本人にとっては、それは疑う余地のない「音楽」だったのでは、と想像します。

 

最近、「人は何をもって音楽というか?」というテーマについて音楽療法士達と話す機会が続いていたため、この時も「本当に色々な音楽がある・・・誰が何をもって音楽と判断するのか?」を考えつつ、このオーディション現場を通り過ぎました。

 

音楽を本格的に学んだ人の多くは、そうでない人達と音楽の聴き方が違う(聴いた時の脳の動きが違う)ということは、様々な研究を通して証明されてきました。今回の件ほどでないにせよ、専門的に音楽のトレーニングを受けた人達は、非ミュージシャンの人とは違った形で音楽を捉えているケースが多々あると思われます。

 

専門的に音楽のトレーニングを受けて演奏家として活躍する人達が上記の事柄を常に意識して仕事をしているとは思いませんし、意識しなくても演奏家としての仕事に特に支障のない場合が多いように思います。

 

一方、この点をしっかり認識して仕事に取り組む必要があるのが、私達音楽療法士です。

 

「え?そうなの?」「なぜ音楽療法士はそこを認識していないといけないの?」と思った音楽療法士の皆さん、是非次回ブログでこの続きをお読み下さい。

 

 

 

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