その4:伊賀音楽療法研究会メールマガジンへ投稿【世界大会レポート】

 
小沼愛子
 
 
昨日、「伊賀音楽療法研究会のメールマガジン」10月号に掲載予定の記事を投稿したところ、本日早速メルマガが配信されました。

韓国での世界音楽療法大会参加についてはこのサイト内のブログその1その3でも書かせていただきましたが、今回のメルマガの記事では、大会内容などについてもう少し詳しく書いたので、このブログでも紹介させていただきます。
 
私はこの大会の主催者である世界音楽療法連盟のプレゼンテーションに参加したため、そこでしか語られなかった、本学会における大会長の目標や新しい試みなどを聞く事が出来たのです。
 
大会参加者およそ1450名のうち、この発表を聴講したのはたった20人前後、日本人は間違いなく私のみでした。そのため、日本語でこのことを書いている人は他にいないはず。貴重な情報!です。
 
さて、この「伊賀音楽療法研究会のメールマガジン」には、3年4ヶ月ぶり2度目の投稿となりました。今回の投稿をきっかけに、過去3年余りの音楽療法士としての自分自身の変化について考えてみました。
 
当時は新しく立ち上げた音楽療法のプログラムが上手くいくように懸命に働いていました。音楽療法のプログラムは試行錯誤しながらも順調に行っていたのですが、アメリカ人や他国出身者とのコミュニケーションに戸惑い、打ちのめされ、疑問と発見の毎日でした。最終的に、「表現の違いこそあれ人間というものはどこでも同じである」ということを認識し、それは今後の自分の人生に大きく影響を与える発見となりました。

迷いも障害も多く、なかなか前に進めないように感じる日々でしたが、振り返ってみるばそれなりに進めた部分もあったようです。次の3年もゆっくりでも前進できるように、引き続き自分に出来ることをしていこう、と、気持ちの引き締まる良い機会となりました。
 
この下に今回伊賀音楽虜法研究会のメルマガに送った記事を貼付けます。少し長くなりますが、読んでいただければ嬉しいです。
 

 

伊賀音楽療法研究会メールマガジンに記事を書かせていただくのは2008年6月以来3年4ヶ月ぶり、2度目となりました。米国ボストン市在住の小沼愛子です。 

 

前回の投稿では、当時私の働いていた施設での新しい音楽療法プログラム立ち上げの道のりなどについてお伝えしました。記事を読んでメールを下さった方々に、この場をお借りして再度お礼申し上げます。

 

いている時点では予期しなかったことでしたが、メールマガジンという、「現代的な」メディア形式の利点を実感できる機会となり、大変有り難く、また興味深く感じたのを覚えています。国を超えたやり取りは決して特別なことでなく、ごく自然に感じられました。同時期に日本の雑誌や本などに記事を掲載する機会があったのも手伝い、いつか国を超えて音楽療法分野の発展に寄与したいという気持ちを、漠然とですが、今日まで持ち続けてきました。

 

インターネットを使ったコニュニケーションは、私達の多くにとってごく日常的なこととなり、「世界が小さくなりつつある」という感覚を体験された方は少なくないと思います。もちろん、実際に地球が縮んだわけではありませんが、日本からだとほぼ地球の裏側に住む私の送ったメールが、東京の友達の携帯に瞬時に届く、ということが当たり前となり、距離“感”はうんと縮まっています。

 

音楽療法フィールドにおいても、 10年前と比較すると、遥かに多くの音楽療法関連文献やウェブサイトがインターネット上で容易に見つけられるようになりましたし、他国での音楽療法について知る機会は確実に増加しています。

 

しかしながら、このように大量の情報が比較的楽に手に入れられるようになったにも関わらず、私自身は日々の臨床に追われ、国際的活動への手がかりなど全くないまま、あっという間に余裕のない数年が過ぎ去りました。(他の多くの臨床士達が同じような経験していらっしゃるのではないかと思います。)そんな中、昨年末で仕事の区切りがついたことを契機に、今までやれなかったことをしようと思い立ち、今年2つの国際学会にて発表申し込みました。

 

結果、6月にはスコットランドのエジンバラ市で行われたNeuroscience & Music IV(第4回神経科学と音楽)という学会に、7月には韓国ソウル市で開催された XIII World Congress of Music Therapy (第13回世界音楽療法大会) に参加発表出来る機会を得ることが出来ました。今回は、参加した2つの国際学会のうち、後者の世界音楽療法大会についてのレポートを兼ねて、自分の体験や感想を書かせていただきたいと思います。

 

開会式にてまず目を見張ったのは、この学会への日本からの参加者が130名を超え、開催国である韓国からの参加者(600名以上)に続く数となったことでした。地理的に近かったことが大きな要因であると思いますが、日本人音楽療法士の世界大会への関心の高さを嬉しく思いました。続いて中国からの参加者も多く、他のアジア諸国からの参加者も多数あったようです。

 

音楽療法分野の国際大会でアジア人が過半数を占めるという現象は過去には皆無であったと推測されますから、開催地韓国のみならず、日本や他のアジア諸国にとっても大きな意味を持つ大会となったのではないでしょうか。ちなみに、この大会には世界45カ国から、約1380人が参加したそうです。

 

大会開催中、至る所に韓国人学生ボランティアの姿があり、その学生達によって支えられていた大会であったと感じました。開催場所となったソウル市の淑明女子大学の学生のみならず、アメリカなど海外で音楽療法を勉強している韓国人学生達もボランティアとして働いている、と聞きました。責任と熱意を持ってボランティアに取り組む姿には感心させられましたし、この若い熱意が、大会長を務めたChoi博士の第一目標であった、「参加費の大幅カット」を実現させたとも思います。この経費削減は第12回大会よりも多い参加者を得ることへと繋がり、ひいては大会の成功を導いたとも言えるでしょう。

 

この大会中、Choi博士は世界音楽療法連盟(WMTF)の今期(2011-2014)会長に選任されました。26年に渡るWMTFの歴史上、アジアで大会が開催された事もアジア人会長が誕生した事も初のことです。アジアでの音楽療法の今後の発展を期待させる功績であると思います。

 

さて、大会の概要ですが、5日間の開催期間中に、124のプレゼンテーション、32のワークショップ、8つのラウンドテーブル、5つのクリニカルフォーラム、48のポスターセッション、4つのスポットライトセッションに加えて、開会式、閉会式、 野外ディナーなどと共に、韓国伝統音楽や舞踊を含む催しもあり、盛り沢山な内容でありました。

 

韓国の音楽や文化に触れる機会であり、世界中の音楽療法士達と交流できる貴重な機会であり、世界の最新音楽療法情報を得る機会でもありました。プレゼンテーションの内容や形式は実に様々でしたが、その中で、4日間連続で行われた、2時間枠の「スポットライトセッション」は、世界音楽療法大会にとって初の試みだったそうです。大会場にて、テーマごとに選ばれた4人の音楽療法士/研究者(国やバックグラウンドは様々でした)が順番に発表し、最後に質疑応答という形式でした。同じ「お題」でも、人によってこんなに視点や技法に差があるのか、と興味深く聴講した人が多かったと思います。

 

また、中国やチリでの大震災後の音楽療法に関してのプレゼンテーションに参加出来たことも大変有意義でありました。これらのプレゼンテーションでは、多くの日本人音楽療法士の方が聴講されており、復興への貢献を志す音楽療法士の多さを示していたように思います。

 

この大会中、現在カリフォルニア州在住の中井弥生さんと2人で、「世界の音楽療法士から日本の音楽療法士へのメッセージ」を3枚の色紙に集め、大会後、2枚を日本音楽療法協会へ、1枚を福島学院大学で音楽療法を学ぶ学生さん達へ寄贈させていただきました。依頼したすべての音楽療法士達がメッセージを書くことを本当に快く承諾して下さり、震災後の日本を思う気持ちを表現して下さったことに、限りない謝意を表します。

 

個人的には、日本から沢山の音楽療法士や関連分野で活躍する方々が参加されていたこと、その中でプレゼンテーションをされた方達も沢山いらっしゃった為、お話する機会や日本の音楽療法についての発表を拝見出来る機会が多数あったことが最も嬉しく、活力となった経験でした。

 

オープンかつ楽しく意見情報交換していただけたことに心から感謝すると共に、今後の日本の音楽療法の発展に大きく貢献するであろう、実力ある日本人音楽療法士の方々から戴いたエネルギーと、暖かく力強い交流が私の中にしっかりと根付き、今後へ向けての大きな原動力となっています。

 

テクノロジー媒体を通してのコミュニケーションは今日では必須ですが、実際に会って、お互いの顔を見ながら話をすることの大切さが改めて身にしみる機会ともなりました。こうした機会がもっと増えてほしい、増やしていきたい、そのために何をするべきか、と、その後も継続して考えています。

 

以前のような漠然とした夢ではなく、具体的な個人目標が生まれつつもあります。非常に個人的なレベルの話であり、大変小さな第一歩でありますが、国際学会参加を通して得たものは自分にとっては大きく、今後の活動の方向づけを影響する経験となりました。これを今後にどう活かせるか。同じように感じている音楽療法士や関連他業種の方々が日本にも世界にも沢山いると信じ、その人達と繋がっていけることを願い、ゆっくりではありますが、一歩一歩確実に目標に向かい前進していけるよう努力していきたいと思っています。

 

つたないレポートを最後まで読んで下さって本当にありがとうございます。ご質問、ご意見などありましたら、メールいただけば幸いです。

 

小沼愛子 aonuma@mtkakehashi.com

 

 

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