ニューロリハビリテーションにおける音楽療法③ 〜Concetta Tomanio博士〜

 

中井弥生&小沼愛子

 

 

今回から、ニューロリハビリテーションにおける音楽療法の分野で活躍している音楽療法士達の研究やその手法、また関連の強い研究や臨床をされている方々や団体について書いていきたいと思います。

 

*まだこのシリーズの①②をお読みでない方は、ブログその3435をお読みになって下さい。

 

今回は前回の記事にも登場したコンセッタ・トマニオ博士(Dr. Concetta Tomanio)の紹介です!

 

トマニオ博士は脳障害や神経系の病気の方への音楽療法の研究、臨床を長年されていらっしゃるエキスパートです。

 

博士はニューヨーク州ブロンクス、ベスアブラハム病院内にあるInstitute for Music and Neurologic Function(IMNF)の共同創始者であり現役員を努めておられ、リハビリテーションにおける音楽と脳の研究を臨床の場でどう応用出来るかを長年にわたり実践されており、多くの大学や学会での発表講義、そして他業種の方々とのコラボレーションを行っている方です。

 

中でも著名な作家である神経科医、オリバー・サックス博士 (Dr. Oliver Sacks) とのコラボレーションは有名です。映画「レナードの朝」はオリバー博士の著書「Awakings」を元にしたもので、このベスアブラハム病院を舞台としたストーリーでありました。

 

た昨年(2011)には、トマニオ博士をモデルとした音楽療法士が登場する「The Music Never Stopped」という映画が公開されました。音楽療法に関する場面は少ないのですが、音楽が脳に与える影響とそれをリハビリにどう応用できるかという可能性が表現されており、音楽療法士の役割がうまく紹介された映画だと感じました。

 

トマニオ博士はウィキペディアに紹介されている数少ない音楽療法士でもあります。(音楽療法士がウィキに載ったなんてスゴい!と感心した覚えがあります。)

 

数ヶ月前、失語症患者と音楽療法に関する彼女の臨床をまとめた論文が発表されました。失語症患者の方の発話だけではなく呼吸、発声、記憶、社会性、非言語コミュニケーション等を総合的な領域を考慮に入れたテクニックや音楽療法の考え方をまとめた論文です。

 

Tomaino, C. (2012).  Effective music therapy techniques in the treatment of nonfluent aphasia.  Ann N Y Acad Sci, 1252,  312-7.

 

この論文を読むと、彼女がひとつのアプローチに拘っていないことがよく分かると思います。直接トマニオ博士とお話しした際、「(彼女が指揮を取るIMNFでは)違ったアプローチを持つ音楽療法士を雇うようにしている」とおしゃったのが印象的でした。プレゼンテーションや論文だけでなく「広いアプローチ」を心がけるようにしている、ということをここでも感じました。

 

これまで学会などで彼女のスピーチを何度か聞く機会があったのですが、音楽療法がこれからどう発展していくべきか、謙虚ながらも彼女の情熱と信念が伝わってきていつも感銘を受けます。また、違った種類の聴衆に対して、時に専門的に、時には分かりやすく噛み砕いて話すことの出来る素晴らしいスピーカーであるとも思います。

 

博士は失語症や他のリハビリテーションのみでなく、認知症の音楽療法の研究にも広く関わっておられます。それが彼女の音楽療法士としてのルーツでもあり、認知症を煩う人達と関わる中で音楽療法の効果を確信していった経緯があるそうです。

 

トマニオ博士が役員を勤める「Institute for Music and Neurologic Function」のウェブサイトを、後日、「音楽療法関連のウェブサイト紹介シリーズ」の一つとして詳しく紹介させていただきたいと思います。

 

次回のこのシリーズ「ニューロリハビリテーションにおける音楽療法」では、スタッフ中井の記事にも何度か登場したウェンディー・マギー博士を紹介させていただきます。

 

 

この分野に関わる臨床家、研究家の方々を調べていくと、彼らが多くのプロジェクトや共同研究でお互いに関わっていたりと、やはり根本はつながっている事を発見することが多くあります。

 

日本国内でもそういった繋がりを増やしてニューロリハビリテーションにおける音楽療法を発展させていければ素晴らしいですね。

 

 

 

  ↓ ★クリックお願いします ★

ブログ村「音楽療法」のページ

 

人気ブログランキング「音楽療法」のページ

 

 

 

前号記事を読む<<<   >>>次号記事を読む