小沼愛子
認知症患者への音楽の効果を扱ったドキュメンタリー映画、「パーソナル・ソング(原題:Alive Inside)」について、続きです。
(前回ご紹介したビデオを観ていない方は、まずこちらからビデオをご覧下さい。)
音楽の力をダイレクトに見せてくれそうな予感のするこのフィルム、音楽療法士としてはワクワク度が高い分、考えるべき部分も大きい、と個人的には思っています。色々思うことがあったので今回はそれを書こうと思っていたのですが、少し違う方角へ向かうことになりました。
実は、前回ブログを書いた直後、私はAMTA (アメリカ音楽療法学会) の学術大会に参加するために、ケンタッキー洲ルイビル市へ向かったのです。
現地到着後、大会プログラムをチェックしていると、上の写真の部分が目に止まりました。
「Music and Memory, Alive Inside, and Music Therapy」についてのフォーラムがある、と記載されていたのを見つけたのです。
「Music and Memory」といえば、「パーソナル・ソング」制作の大元となった、ソーシャルワーカー、ダン・コーエン氏の設立したNPO団体です。
映画の予告にあるように、各個人のお気に入りの曲を入れた “personalized ipod”を認知症患者達に提供することを主な活動としています。この映画は、「彼の活動を追ったドキュメンタリー」と言って過言ではないと思います。
プログラムには、この団体の設立者であるダン・コーエン氏ご本人もフォーラムに参加すると記されているので、これは良い機会だと思い、翌日、そのディスカッション型フォーラムに参加してみました。大会場のステージの上には、コーエン氏と並んで、コンセッタ・トマーニオ博士(博士をご存知無い方はこちらをご覧下さい)、そして他2名の関係者、計4人がパネルとして並んでいました。ミディエーター(仲介役的な司会者)が、壇上の4人のパネル達に一人ずつ質問をする形式でフォーラムはスタートしました。
フォーラム全体の印象から言うと、「AMTAは、この映画での認知症患者への効果的な音楽の使い方を大きく評価しサポートしてきた」ことを示しながら、「でもこれは音楽療法とは別物なので、その点は混乱のないよう注意しましょう」というメッセージを要所要所に織り交ぜながら話が進んでいった感じです。
色々な視点からこのテーマについて考えられるよう配慮された質問と回答が続きます。そして、壇上で交わされていただけの形式から、オープンな質疑応答へと写りました。
会場が非常に大きいため、質問したい人は会場前方のステージ下に立てられたマイクまで歩いて行って質問する形式です。私も早速マイクの前に並びました。興味深い質問と回答が続き、私の番が回ってきました。
「つい最近、この映画日本語の宣伝ビデオを観た時、『これは音楽療法』と紹介されていましたが、コーエンさんはそれをご存知でしたでしょうか?」
「全く知りませんでした。私は Music and Memory の活動を音楽療法、と言った事は一度もありません。」
他のパネル達も、「(日本で彼の活動が音楽療法と言われていることが)コーエン氏の意志でないことは明らかだ、彼はその点に最大の注意を配りながら活動している」とフォローしていました。
日本語広告を観て以来混乱と共に色々と考え込んでいたため、映画の中心人物であるコーエン氏本人の意志を確認できたことは私にとって大きな収穫でした。
色々な意図があって、この映画は日本で「音楽療法」と紹介されているのでしょう。いずれにせよ、「音楽の力」を取り上げた、私達にとって重要なフィルムであることには変わりないと思うので、是非観たいと思います。
次回ブログで、このフォーラムで取り上げられた他の音楽療法士達の意見やディスカッションの内容なども紹介したいと思います。
皆様、良い週末をお過ごし下さい!
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